言葉を失う

ミステリーではありません。ホラーでもありませんが、読んだ後、しばらく気持ちが落ち込んだことは事実です。

「日の名残り」を読んで、気に入った私は著者の作品を何点か読んでみました。

そして、「わたしを離さないで」を読んで感じた感想が、言葉を失う・・・でした。

しばらくは気持ちがアップせず、落ち込んでいたような気がします。

普通、本の後ろには解説があり、本に書いてあることをかみ砕いて紹介したり、あるいは解説者自身の考えや思いを書き記してありますが、この本の解説は、ほとんど内容には触れていませんでした。

解説者は次のように言っています。

「静かで端正な語り口とともにはじまって、いかにもありそうな人間関係が丹念に語られるなか、作品世界の奇怪なありようが次第に見えてくる。そして、世界の奇怪さが見えてきたあとも、端正な語りから伝わってくる人間的切実さはますます募っていき、もはや他人事ではなくなっているその切実さが我々の胸を打ち、心を揺さぶる。
決してあわてず、急がず、じわじわと物語の切迫感を募らせていくその抑制ぶりは本当に素晴らしい。
と、まずは漠然とした言い方で賞賛したあとは、内容をもう少し具体的に述べるのが解説の常道だろう。だが、この作品の場合、それは避けたい。なぜなら、この小説はごく控えめに言ってもものすごく変わった小説であり、作品世界を成り立たせている要素一つひとつを、読者が自分で発見すべきだと思うからだ。
予備知識は少なければ少ないほど良い作品なのである。」

ということです。

そして、こんなことも書いています。

「遺伝子工学が今後ますます発展していくなかでその倫理を考えるための重要テクストとみなされるようになるかもしれない。」


解説者はどう感じたのだろうという?という、期待は見事に裏切られ、自分の中で消化しなさいと言われたような気がしました。

確かに、著者の妄想の世界かもしれませんが、あまりにも身近過ぎ、ありえないとは言えないような設定に愕然としました。

次はどうなるんだろ・・・最後はどうなるんだろう・・・こんなことが起こりえるんだろうか?・・・いろんな思いを抱えながら、夢中で読んでしまいました。

正確には、人権は?自由は?個性は?といった、ごく普通の疑問が私の中でずっと渦巻いていました。

そして、人間の尊厳とは一体何なのだ?

こんな疑問です。

そして落ち込みます。。。

内容に触れるのは、これから読まれる方に対して、失礼にあたるという解説者に見習って、自分が感じた感想だけを記したいと思います。

でも、「こういうことは絶対あってはならない!」と、作者は思っているに違いない・・・と自分に言い聞かせて、納得することしました。

いまだに、消化不良ですが、これからの医学の進歩に対して、人間らしい倫理観を持って進んでほしいものだと思いました。


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